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誰もいなくなるまで ここにいるよ

ぜんぶ雪のせいだ。

真夏にウィンタースポーツの件。

 

生まれて初めてスノーボードを経験したのは学生の時だった。経験者も初心者も含む友達十数人で、雪の降る遠く高い山へ行った。以前も述べた気がするが、海とか雪山とか、自然を相手に一人黙々と体を動かすのが苦痛な私。あまり乗り気ではなかった。持ち前の運動神経でスノーボードなんて楽勝に乗りこなせて、果たして何を競うのか、つまらないものだと思っていた。それでもスノボキッズを持っていたので(当時クラスじゃ負け知らず)、イメトレばっちりで当日を迎えた。

 

しかしいざ滑ってみると、そう簡単にはいかない。私はスノーボードに乗れない側の人間だったのだ。人生でぶつかった高い壁のひとつだろう。イメージ通りに体が動かない。本物のスノボーとスノボキッズは全然違うのだ。人が板に乗ってるだけなのに。こんなにも操作性が異なるなんて。

二度と雪山なんて来るかと思いながら、暖かい小屋で談笑などをして残りの時間を過ごした。ちょっぴり惨めで素敵な時間だった。あんな寒い山奥でさえも、暖かい笑顔を振りまけるような友人を一生大切にしたいと思う。

それでもせっかく時間をかけてスノボーに来たのだから、最後に ヒトスベリ キメようと決心した。最初のやつは何かの間違いだろうと思うことにした。それまで黙々と練習を重ねた初心者組と共に、難しめのコースへ向かった。休み過ぎると良くない。判断が鈍るのだ。

 

おそらく一般的なのだろう、コースは中央から端部にかけて円弧状に雪が盛られ、端部側がいくらか低く設計されていた。とりわけ難しめのコースは、その高低差がえげつなかった。さらに、一応両端には網々の柵が張られているのだが、その先はとんでもない崖になっていたのだ。(下図参照)

 

私はその柵へ向かって転げ落ちた。難しめのコースにリフトより降り立って間もなく。わりと序盤での出来事だ。当然何をしたわけでもない。ゲレンデマジックとでも言うのだろうか、私の意思に反して気付いたらそこへ進んでいた。

かろうじて柵にひっかかったものの、身動きが取れなくなってしまった。ボードの外し方もよく覚えていない。掴む場所もない斜面なので立ち上がれない。高低差のせいか近くに人も見えない。無闇にジタバタすると柵の向こうの崖へ落ちてしまうのではないか。なぜこんなことに。もっと練習しておけばよかった。こんなとこ来るもんじゃなかった。山小屋はあんなに暖かかったのに。深々と雪が降り始めた。

 

 

 

 

私はそのまま天を仰ぎ、

広がる白銀の世界に身を委ねた。

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今週のお題「人生最大の危機」

 

 

 

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